2015年8月12日水曜日


安全保障関連法案に疑問を呈する下関市立大学有志の声明

2015年8月
 
 昨年(2014年)7月1日、安倍政権は限定的ながらも「集団的自衛権」の行使容認を閣議決定しました。識者の指摘するように、これは1972年の「集団的自衛権と憲法との関係に関する政府資料」と同様の前提に立ちながら、「安全保障環境の変化」を根拠に結論部分を変更したものです。同資料では、「他国に加えられた武力攻撃を阻止することをその内容とするいわゆる集団的自衛権の行使は、憲法上許されないといわざるを得ない」と明言されていました。したがって昨年の閣議決定により政府与党は、自衛権といえば専守防衛の「個別的自衛権」にほかならないとする従来の憲法解釈の大幅な変更へと踏み出したことになります。
 昨年12月14日の総選挙を経て、本年に入り、政府与党は11法案にのぼるいわゆる「安全保障関連法案」を上程し、国会会期を9月27日まで戦後最長となる95日間延長したうえで、同法案を7月16日、衆議院を通過させ、現在は参議院に送付され審議中です。
 この間、多くの国民が安保法制反対の声を上げています。その背景には、今回の法案が、わが国の歩んできた平和国家としての性格を大きく変えるのではないかという不安があります。専守防衛に徹し、かつ震災時を初めとする災害派遣の実績等により、国民の幅広い理解と支持を得てきた自衛隊も、今回の安保法制によってその性格を大きく変えることになります。
 そもそも昨年末の総選挙は、「アベノミクス」の中間評価および消費税率引き上げ延期の是非という経済政策を中心争点としていました。「景気回復、この道しかない。」これが自民党のキャッチコピーでした。同総選挙で多数の議席を得たことが、そのまま安全保障政策の支持を意味すると考えるのは無理があるのではないでしょうか。
 国民は、安全保障関連法案をめぐる審議過程を目の当たりにして動揺しています。そして、安保法制が今までの安全保障政策の何を維持し、何を変更するのかについても、政府与党の説明にもかかわらず、十分な知識と理解が得られたわけではありません。これはつまり、安全保障政策を争点の一つとする「総選挙」を通じて、一定期間の学習期間を経たうえで、国民自身の意向を問うべきだということを意味しないでしょうか。
 国民不在と受け取られても仕方のない政権運営が続いているように思われてなりません。平和主義や立憲主義といった憲法の理念だけでなく、私たち大学人の立場からは、学問の自由さえも脅かされているように思われるからです。周知のように文部科学大臣は本年6月8日、国立大学の人文・社会科学系学部の「廃止または転換」を通達しました。多くの大学はすでに「社会的要請」への対応において十分すぎるほど苦慮してきたわけですから、これはもはや大学自治への露骨な行政介入にほかならず、ひいては、人文・社会科学系諸学部で培われる批判的思考の芽を摘み取ったうえで、政府与党の方針に適う、または実益をもたらす分野にのみ予算を重点配分することを目指すものだと言わざるをえません。
 安全保障政策、文教政策、さらには普天間飛行場移設問題、TPP問題、原発問題…ここ数か月間の政権運営でますます目立ってきたのは、政府与党の「拙速」かつ「恣意的」な判断です。「国のかたち」を大きく変えるこれらの案件は、国民不在のまま結論を急いではならないはずです。
 下関市立大学は、「東アジアを中心に広く世界に目を向けた教育と研究」を行うことを通じて「地域社会及び国際社会の発展に寄与すること」を建学の理念とし、地方公立大学のなかでも最も古い大学の一つとして、およそ60年間にわたり多くの卒業生を世に送り出してきました。私たちは、今回の安全保障関連法案が、東アジア地域の緊張を不必要に高めることによって「地域社会と国際社会の発展」を大きく損ねることを危惧します。
 拙速かつ恣意的な判断に基づく政権運営の失敗は、太平洋戦争、そして戦後の原発政策の顛末を見れば明らかです。戦後70年というこの大事な節目に、政府与党は今一度、民主主義の原点に立ち返るべきです。私たちは、①政府与党が改めて国民の声に謙虚に耳を傾けること、②十分な理解を得られたとは到底言えない安全保障関連法案を廃案とすること、③仕切り直して総選挙において安全保障政策を中心争点とすること、そして、④各党が賛否の立場およびその根拠を十分に示したうえで、国民自身の審判を仰ぐこと、これらのことが最低限必要であると強く主張します。



呼びかけ人(50音順)

相原 信彦(経済学部教員) 木村 健二(経済学部教員)

桐原 隆弘(経済学部教員) 関野 秀明(経済学部教員)

水谷 利亮(経済学部教員) 山川 俊和(経済学部教員)


 

下関市立大学関係者の皆さま

  私たち、「安全保障関連法案に疑問を呈する下関市立大学有志」呼びかけ人は、現在国会で審議中の「安全保障関連法案」へ疑問を呈し廃案を求める「声明」を上記のとおり発表し、全ての下関市立大学教職員、非常勤講師、元教職員、学生、卒業生の皆さまに広く賛同を求めます。
 すでに国会審議で明らかなように、この「安全保障関連法案」は、
イラク戦争時に「非戦闘地域における人道復興支援活動」に限定されていた自衛隊の活動を、今後「戦闘地域における兵站(武器、弾薬などの補給)活動」に拡大するものであること、
形式上「停戦合意」があっても、なお戦乱が続く地域に自衛隊を派兵し、3500名の戦死者を出したアフガンの国際治安支援部隊(ISAF)のような国連が関与する治安維持活動参加も認めること、
専守防衛の立場を捨て、米国が海外で行う戦争に、日本が攻撃されたわけでもないのに、自衛隊、さらには動員された国民が参戦する「集団的自衛権の行使」を可能としていること、
 以上から、日本国憲法第9条違反であることが濃厚であり、政府自らによる「法の支配」の破壊を招くことが危惧されます。
 北朝鮮の核・ミサイル開発や尖閣諸島をめぐる中国との対立は、軍事力、軍事同盟の強化や戦争で解消できるものではありません。対立を戦争にしない、平和憲法に基づく外交努力だけが平和共存を可能にします。
 私たちは、この「安全保障関連法案」へ疑問を呈し廃案を求め、上記「声明」への皆さまの賛同を募り、しかるのち、広く地域、社会にたいし、この「声明」を広げていきます。
 賛同いただける方は、私たち・呼びかけ人までご連絡ください。
 共に地域、社会の平和を求める世論と交流できれば嬉しいです。

 2015年8月吉日
「安全保障関連法案に疑問を呈する下関市立大学有志の声明」呼びかけ人一同



【本声明への賛同を募ります!】
 「安全保障関連法案に疑問を呈する下関市立大学有志の会」は、広く賛同者を募っています。賛同いただける方は、下記の連絡先までご一報ください。
 その際、以下の情報をお寄せください。


1:メールでのご連絡
お名前(姓と名の間に空白を入れてください)
ご所属・肩書き
メッセージ(任意)
声明文「賛同者」欄へのお名前の公表にご同意いただける場合、その旨、お知らせください。なお、本ウェブサイト上での「賛同者」の氏名公表は行いません。

 連絡先:「安全保障関連法案に疑問を呈する下関市立大学有志の会」事務局

   scu.peace@gmail.com

2:署名フォームを利用してのご連絡(以下のフォームから情報を送信できます)
 署名フォーム 

メール・署名フォームにより当事務局に送信された個人情報は、厳重に管理します。




新聞報道

朝日新聞(地方版) 2015822

毎日新聞(地方版) 2015822


賛同者の方々からお寄せいただいたコメントの一部を紹介させていただきます。

1975年卒業生です。違憲の法案であり国民主権をふみにじるこの安保法案は文字通りの戦争法案です。市立大学の建学の理念にもふれた「廃案を」のアピールに「よくぞ行動してくれた」と勇気をもらいました。ここ下関から大きな声と運動で必ず止めましょう。

この声明は安倍首相の選挙区で市民の良識と知性を示し、全国の平和を愛する人たちをおおいに励ますものです。 憲法に違反し、東アジアの友好にひびをいれる「戦争立法」は、下関市立大学で学んだものとして、認めることは出来ません。 声明の呼びかけ人なった先生方の勇気ある行動に敬意を表します。

我らが母校・下関市立大学で、しかも安倍首相の地元中の地元で、先生方が声をあげられたことに、心から敬意を表します。 思想信条・党派、しかも世代を超えた闘いが広がっています。 ともに頑張りましょう。

安全保障関連法制と言いながら中身は正に「戦争法案」。学者が言うまでもなく私も違憲であると思います。国会での審議が頻繁にストップするなど政府がまともに答弁できないような法案は拙速に成立させるべきではありません。 下関市立大学人の力を合せ、全国の大学人とも連携して必ず廃案させましょう。下関市立大学有志の声明に賛同いたします。 (1980年卒業生)

いかなる戦争にも反対します。 子、孫、後に続く子供たちのために憲法9条を堅持したい。 

東アジアの発展のために、安全保障法案に反対し、憲法を守り抜きます。

この間の国会審議を通してこの法案の違憲性は明確になり、廃案を求める声は空前の高まりを見せています。母校からのアピールに心からの敬意と連帯を表明します。廃案に追い込むために、ともに力を尽くしましょう。

北海道 札幌から 皆様の今回の声明に100%賛同のアピールを送ります。 安倍首相の選挙区、地元下関の皆様から良心に基づくメッセージが発せられたことに、安堵感を覚えました。 民主主義政治のもとでの武器は、選挙でどう判断を下すか、です。 仮に廃案に持ち込めなかったとしても、次の選挙まで粘り強く戦われるよう切に希望します。

呼びかけ人の皆様の平和を希求し、憲法9条を守るとする活動に敬意を表します。安保法案の内容は勿論、市民・国民の声を蔑ろにした政府行政、多数政党の数を楯とした権力行動に憤りを抱き、強い危機感を抱きます。ご健闘を祈ります。

「安全保障関連法案に疑問を呈する下関市立大学有志の声明」を発表されたことに対し、敬意を表するとともに、全面的に賛同いたします。
 戦後日本が育んできた平和主義は、15年戦争において多くの民が犠牲を払った「代償」であり、二度と愚かな戦争をさせないために、為政者を縛っているのが、憲法第9条にほかなりません。憲法第9条を形骸化させることなく、守り受け継ぐことが我が国の戦後責任です。
「安全保障関連法案」の廃案を目指して、及ばずながら奮闘したいと思います。皆様方のご活躍を祈念し、連帯のメッセージとします。

下関市立大学の先生方が、安保法制や立憲主義、民主主義等々で声明を発表されたことに共感し大変勇気づけられています。 憲法遵守義務のある政権が憲法を無視して暴走しているのを止めるには、来年の参議院選挙は勿論ですが直接民主主義の様々な方法で打開する必要があると思っています。


有志の会の「のぼり」が届きました。
どうもありがとうございます。